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翻訳の仕事のこととか中国語のこととか中華圏旅行のこととか。当たり前だけど内容はあくまで個人の見解です。

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翻訳…特に産業翻訳をやっていると必ず付いて回る「スタイルガイド」。これに対する翻訳者さんの認識っていうのは個々人で違うとは思うのですが、私は社内でコーディネーターやチェッカーをやっていた頃の経験からして、翻訳の商品としての品質の管理・維持の上で結構無視できない、重要なものであるという認識を持っています。持っているのですが…!!

…守るの結構大変なんですよねemoji

なぜかというと「自分の翻訳のスタイル(文章の癖ともいう)」とスタイルガイドが同じとは限らないから。

ただ単に「文章内で用語/文体を統一してください」という指示だけならそんなに苦でもないのですが(自分の文章で訳して、その中で自分の選んだ用語・文体で揺れがないかどうかに気を付ければいいので)、例えば、

「箇条書きは体言止めにする」とか
「この動詞/こういうフレーズはこう訳してください」とか
「漢数字はすべてアラビア数字に」とか
「この単語はこう訳してください(カタカナ語ではなく和語/漢字語で)」とか。

この辺はそれこそ訳す人によってさまざまなバリエーションがあるわけで(だからこそお客様としては複数翻訳者で訳す場合やシリーズものの場合などでは特にきちんと統一していて欲しいものなのでしょうが)、自分の文章の癖が上記のスタイルに当てはまらない場合、いちいち自分の文章の癖をリセットしなければならないので、結構大変です。

(個人的に、箇条書きは体言止めにしたい箇条書きとしたくない箇条書きとがあるので、一律に「体言止め」とされてしまうと文章を構成する段階で結構戸惑ってしまいます。まぁそれは動詞やフレーズ、単語の訳し方でもそうですが)(←だからまぁ色んなバリエーションの訳文が書けるように表現力つけましょうね、という話になるんでしょうが、それは別の話になるので今回ちょっと置いときます。)

しかも会社さんによってこの辺の決まりは違っているので、複数の会社さんと取引がある場合は逐一その辺を確認しなければならず、ただ単に「訳してください」より手間がかかるんですよね…。

納期に余裕がある場合はスタイルガイドを確認しつつ慎重にできるのですが、短納期だったり、案件自体の納期に余裕がある場合でもこちらに他のお客さんからのお仕事が立て続けに入って来ている繁忙期なんかは正直訳すだけでいっぱいいっぱいなので、とてもスタイルガイドにまで構っている余裕なんかなかったりします。

それでも普段からコンスタントに仕事くれる翻訳会社さんからのお仕事ならスタイルガイドの内容も分かっているので対応しやすいのですが、問題は新規の取引先やこのところお仕事のご連絡が大分ご無沙汰していた翻訳会社さんからの場合。

決まりに慣れていないので大変ですemoji

しかも受注してから「本案件のスタイルガイドです」と渡されたときには(しかも結構規定が細かい)、「ええ~早く言ってよ…(;´Д`)」な気分になります。

なので最近、納期的にどう考えてもスタイルガイドまで考慮して納品するのが難しい場合は、断腸の思いでお断りしてしまうこともしばしばですemoji

スタイルガイドを完全に無視してくる翻訳者さんも中にはいらっしゃることは過去の自分の社内での経験からも分かっているのですが(というか、一番最初に勤めていた会社では、先輩から「翻訳者さんにこういうの守ってくださいって言ってもムダ」と言われた)、これ守られてないとその後の工程でえらい苦労する、というのも分かっているので、きちんと守る方向で行きたいんですよね…。

「一次翻訳から後の工程ではこういう作業が待っているので、一次翻訳者さんには最低限これだけはやってもらいたい/守って欲しい」というのがスタイルガイドだと思っているので。

ただまぁ、人間なのであまり細かいスタイルガイドを完璧に守れる自信というのはないけれど…(←ちょっと弱気)。


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文芸翻訳では多分ないんだろうけど(あまり経験がないので分かりませんが)、産業翻訳やってると割と出て来るのが「訳文の使い回し」。

「訳文をデータベースとして取っておいて原文が同じ箇所の訳として使い回す」ってやつです。訳文全体をそのまま使ったり、訳文の一部(単語とか、フレーズの一部)だけを変えるとか、状況に応じて色々あるけど。

どうしてそういうことをするのかっていうと、まぁ理由は様々あるんでしょうが、その一つとして「翻訳にあまりお金をかけたくないソースクライアント、エージェントさんの意向」っていうのがあると思います。

実をいうと私も翻訳会社に勤務していた頃よく上から言われてたんですよね~。「お客さんがなるべく翻訳にお金かけたくないって言ってるから、原文同じところの訳文は使い回して、翻訳料節約して?」って。

まぁ発注する側は恐らく原文の文章は同じところはコピペして作成しているので、「訳文も結局同じようにコピペして作るんでしょ?こっち(原文)では一度だけしか作ってない文章に二度も三度もお金かけられないよ」ってところでしょうか(※あくまで推測です)。

翻訳を使い回す事情にはこのほか、「翻訳物に対する質の問題」もあると思います。どういうことかというと、特にマニュアルなんかの場合だと、同じ内容の文章には同じ文章(表現)を使うのが質の高いマニュアルとして評価されるんですよ(と、私が前にマニュアルの翻訳を主に手掛けている翻訳会社に勤めていたとき言われました)。だから同じ文章を下手に翻訳に出して、内容は同じでも表現が違う文章になって製品全体の質を落としたくない、という事情もあると思うんですよね(常に同じ翻訳者さんにお願いできるとも限らないし、同じ翻訳者さんでも継続してお仕事お願いしているうちに文体変わったりするため)。

ただ、発注側の意向がどうであれ、「原文が同じだから訳文も同じになって使い回しOK!」とは安易にならないのが翻訳の世界の難しいところなわけで…。

原文言語と訳文言語は当たり前ですが言語が違います。そして言語が違う以上、表現体系も違うし、それを使う人達の文化的・社会的背景も当然異なっているわけなので、例えば「原文言語ではこの文脈/シーンでは同じ文章でいけるけど、訳文言語の場合は同じにはならない」ってことがあるんですよね。

例えば中国語は日本語と比べ、主語や目的語をはっきり出すことが多いから、日本語は主語(もしくは目的語)なしですべてのケースに対応できる文章でも、中国語は主語(もしくは目的語)なしだと動作の主体(や目的)が分からなくなってなんだかぼやけた文章になってしまうし、じゃあ中国人が読んで分かる文章(読んで表現的におかしくないと思う文章)にするために主語や目的語をしっかり出して翻訳すると、その訳文を同じ日本語の別の箇所の訳として使った場合は誤訳になってしまう、ということがあるわけで。

私は英中のチェックもやってますが、英語も中国語みたいに主語や目的語をはっきり出すけど、でも「主語や目的語の出し所」(って言うんですか?)が英中で違うので、やはり上記のようなことが起こったりします。

なので、訳文の使い回しを前提としている仕事を私が翻訳者としてなりチェッカーとしてなり引き受けるときは、訳の使い回しに難がありそうな訳しかできない場合はできる限りコメントつけるようにしています(もちろん事前に「コメントつけて納品してください」って言ってきてくれる翻訳会社さんもありますが)。

特にチェックの場合、翻訳が間違ってるわけでもないのにコメントつけるのは心苦しかったりもするのですが…。コメントつけることによって、次回翻訳が発生した場合、「原文同じだから翻訳に出さなくていいや→完成品が誤訳」は避けられるかなぁ…とも思うので。

個人的には、「訳文の使い回し」は翻訳物の製品としての質を維持するために行われる手法であって、翻訳コストの削減を第一の目的として行われるものではないんじゃないかな…なんて思ってますがemoji

いずれにせよ、原文が同じでも訳文も同じでいけるかどうかというのは結局訳す側しか分からないことだと思うので、面倒くさくても何でも、丁寧に対応していくしかないんじゃないかな、と思っています。


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ほぼ2ヶ月ぶりになりますが、仕事の話です。

タイトルにも書いてありますが、私、チェックの仕事をしているときは、「読みやすい訳文には注意した方がいい」と思いながらチェックしています。

いや別に「読みやすい訳文」を否定するつもりはないんですよ?むしろ「訳文は読みやすくてなんぼ」って思ってるくらいだし。

じゃあなんで「注意した方がいい」と思っているのかっていうと、読みやすい訳文の中には「読みやすくなるよう翻訳者さんの想像で補われた訳文」があるから…です。

どういうことかというと、翻訳の仕事を発注するとき、その翻訳分野(専門分野)に精通した(もしくはその分野の翻訳経験豊富な)翻訳者さんにお願いする、というのはほとんどの翻訳会社さんで採られている方法だと思うのですが、文章の内容って…必ずしも一つの分野のみに絞られるものでもないんですよね…。

文章自体は「A」という専門分野の内容なんだけど、そこにたまたま「C」という別の分野の内容が入っていて、「ああこの翻訳者さん、Aの分野については詳しいんだけどCは不得手なんだな」っていうのが良く分かる訳文っていうのに出会うことがあるんです。

例えば、「C」の部分は翻訳者さん自身あまり詳しくないから、出てきた単語が「C」という専門分野にかかわる用語とは気づかず、一般用語として訳されている…とか。

もしくは「C」の内容にかかわる部分を、「C」に関する知識が乏しいため正しく理解できず、明らかに想像で訳しちゃってる…とか。

特に中国語は全部漢字なので、ちゃんと分かっていないと、それが名詞なのか動詞フレーズとして書かれているのか判断つかない場合ってあるんですよね。(専門用語とか英語から意訳されている場合が多いので…)

しかも想像で訳されちゃってる場合って、読みやすいように(正確には「話の辻褄が合うように」)訳者さんがヘンに情報を追加していたりすることがあり…以前、パッと見話の前後(直近の文章と文章、段落と段落の流れ)がちゃんとつながっているように見えたし、訳文もとても滑らかでスイスイ読めたんだけど、内容が全体的にかなり違っていてこちらで全面修正した…っていうことがあったので、最近ではそういう文章を見ると警戒するようにしています。

まぁ実際ちゃんとした知識の裏付けに基づいて情報追加されている場合もあるので、「情報が追加されているから悪い」とは一概には言えない部分もあるんですけどね。

想像で訳されていて、しかも第三者(チェッカー)が読んでおかしいと感じるのに、なんで翻訳者さんは気づかないのか、と不思議に思われる方いるかもしれないけど、翻訳してるときって翻訳者さんはその文章に入り込んじゃってるので、自分で「こうだ!」と思って訳してるとその後自分で読み返しててもなかなか気づかなかったりするんですよね…。

…私も自分で翻訳するときどこかでやらかしてるんじゃないかと心配ですがemoji

一応チェッカーとしての経験を踏まえ、自分で訳す場合は「ヘンに情報補わないと訳せない部分は自分のこの分野に対する知識が足りない部分だ」と思って、納期が許す限り調べるようにはしていますが…。

あとなるべく余裕をもって翻訳終わらせて、一度寝て頭クリアにしてから納品前の自己チェック(一度訳文のみを通して読んでみることと原文と訳文との照合作業)をする…とか。

「専門分野が細分化されるに伴い、専門分野間の垣根があいまいになってきている」なんて話を以前どこかで読んだことあるんですけど、翻訳もまさしくそんな感じだなぁなんて思っています。

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プロフィール
HN:
暁香月
性別:
女性
自己紹介:
翻訳会社のコーディネータ&チェッカー、中日ビジネスコンサル会社の翻訳事業部のコーディネータ&チェッカー/翻訳者を経て現在中国語のフリー翻訳者。在宅で中日訳のほか、中日/日中/英中訳のチェックなども行っています。夫と二人暮らしのアラフォーです。
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