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翻訳の仕事のこととか中国語のこととか中華圏旅行のこととか。当たり前だけど内容はあくまで個人の見解です。

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文芸翻訳では多分ないんだろうけど(あまり経験がないので分かりませんが)、産業翻訳やってると割と出て来るのが「訳文の使い回し」。

「訳文をデータベースとして取っておいて原文が同じ箇所の訳として使い回す」ってやつです。訳文全体をそのまま使ったり、訳文の一部(単語とか、フレーズの一部)だけを変えるとか、状況に応じて色々あるけど。

どうしてそういうことをするのかっていうと、まぁ理由は様々あるんでしょうが、その一つとして「翻訳にあまりお金をかけたくないソースクライアント、エージェントさんの意向」っていうのがあると思います。

実をいうと私も翻訳会社に勤務していた頃よく上から言われてたんですよね~。「お客さんがなるべく翻訳にお金かけたくないって言ってるから、原文同じところの訳文は使い回して、翻訳料節約して?」って。

まぁ発注する側は恐らく原文の文章は同じところはコピペして作成しているので、「訳文も結局同じようにコピペして作るんでしょ?こっち(原文)では一度だけしか作ってない文章に二度も三度もお金かけられないよ」ってところでしょうか(※あくまで推測です)。

翻訳を使い回す事情にはこのほか、「翻訳物に対する質の問題」もあると思います。どういうことかというと、特にマニュアルなんかの場合だと、同じ内容の文章には同じ文章(表現)を使うのが質の高いマニュアルとして評価されるんですよ(と、私が前にマニュアルの翻訳を主に手掛けている翻訳会社に勤めていたとき言われました)。だから同じ文章を下手に翻訳に出して、内容は同じでも表現が違う文章になって製品全体の質を落としたくない、という事情もあると思うんですよね(常に同じ翻訳者さんにお願いできるとも限らないし、同じ翻訳者さんでも継続してお仕事お願いしているうちに文体変わったりするため)。

ただ、発注側の意向がどうであれ、「原文が同じだから訳文も同じになって使い回しOK!」とは安易にならないのが翻訳の世界の難しいところなわけで…。

原文言語と訳文言語は当たり前ですが言語が違います。そして言語が違う以上、表現体系も違うし、それを使う人達の文化的・社会的背景も当然異なっているわけなので、例えば「原文言語ではこの文脈/シーンでは同じ文章でいけるけど、訳文言語の場合は同じにはならない」ってことがあるんですよね。

例えば中国語は日本語と比べ、主語や目的語をはっきり出すことが多いから、日本語は主語(もしくは目的語)なしですべてのケースに対応できる文章でも、中国語は主語(もしくは目的語)なしだと動作の主体(や目的)が分からなくなってなんだかぼやけた文章になってしまうし、じゃあ中国人が読んで分かる文章(読んで表現的におかしくないと思う文章)にするために主語や目的語をしっかり出して翻訳すると、その訳文を同じ日本語の別の箇所の訳として使った場合は誤訳になってしまう、ということがあるわけで。

私は英中のチェックもやってますが、英語も中国語みたいに主語や目的語をはっきり出すけど、でも「主語や目的語の出し所」(って言うんですか?)が英中で違うので、やはり上記のようなことが起こったりします。

なので、訳文の使い回しを前提としている仕事を私が翻訳者としてなりチェッカーとしてなり引き受けるときは、訳の使い回しに難がありそうな訳しかできない場合はできる限りコメントつけるようにしています(もちろん事前に「コメントつけて納品してください」って言ってきてくれる翻訳会社さんもありますが)。

特にチェックの場合、翻訳が間違ってるわけでもないのにコメントつけるのは心苦しかったりもするのですが…。コメントつけることによって、次回翻訳が発生した場合、「原文同じだから翻訳に出さなくていいや→完成品が誤訳」は避けられるかなぁ…とも思うので。

個人的には、「訳文の使い回し」は翻訳物の製品としての質を維持するために行われる手法であって、翻訳コストの削減を第一の目的として行われるものではないんじゃないかな…なんて思ってますがemoji

いずれにせよ、原文が同じでも訳文も同じでいけるかどうかというのは結局訳す側しか分からないことだと思うので、面倒くさくても何でも、丁寧に対応していくしかないんじゃないかな、と思っています。


拍手ありがとうございましたemoji
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プロフィール
HN:
暁香月
性別:
女性
自己紹介:
翻訳会社のコーディネータ&チェッカー、中日ビジネスコンサル会社の翻訳事業部のコーディネータ&チェッカー/翻訳者を経て現在中国語のフリー翻訳者。在宅で中日訳のほか、中日/日中/英中訳のチェックなども行っています。夫と二人暮らしのアラフォーです。
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